生理で休むのは甘え?

公開日 2023-05-09 更新日 2024-07-18

生理がある人の中で、生理痛で動けない日があったり、貧血で倒れたことがあったりと、生理に伴う症状により仕事・学校に行けない経験をしたことがあるのではないでしょうか。

生理痛で寝込んでいるイメージ画像

生理で仕事・アルバイトを休まざるを得ないときに使える「生理休暇」についての記事です。生理がある人には休む権利があること、会社の上司や学校の先生などには休ませる義務があることについて考えていただけたらと思います。ぜひこの機会に生理休暇について知っていただければと思います。

生理休暇とは

「生理休暇」とは、生理による体調不良で仕事ができない人が使うための休暇のことをいいます。

生理休暇(第 68 条)
生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、その者を生理日に就業させることはできません。

引用:Taro-生理休暇

“生理日の就業が著しく困難”とは、生理に伴う吐き気や頭痛などの体調不良によって、その日働くことが厳しいという人のことを指します。また、業務を問わず休むことができます。そのため会社は、従業員から生理休暇を申請された場合、必ず取得させなければならないと決められています。

生理休暇がある国は、世界中でも数カ国しかないほど珍しい制度です。日本では1947年に法制化され、生理休暇は労働基準法で制定されています。 日本は世界でいち早く法制化されたのですが、定められて77年が経った今でも、9割の人が生理休暇を取得したことがないという現状があります。

現状弊社でも、筆者を含め他の編集部メンバーも生理休暇を取得したことがないとのこと。義務なのにもかかわらず、なぜこんなにも取得しづらいのかを考えてみました。

生理休暇が取得できない裏には“言いづらさ”が原因

生理休暇の取得について調べていると、取得したことがない理由には、仕事が多忙、人員不足、上司に言いづらいなどがあるそうです。

弊社でも“なぜ生理休暇を取得しないのか”を聞いてみました。前職での経験も含めて“生理休暇を取得したことがあるか”に対して「一度だけある」と回答した人は一人で、ほとんどは「ない」という結果でした。
「一度だけある」と回答した人は、「生理がつらくて休んだけど、有給か無給かを選ばなくてはいけなかったため有給を消化した」とのことです。

生理休暇を取得したことがない理由とは

生理休暇の取得経験がない人に“取得したことがない理由”を聞いたところ、以下のような回答がありました。

  • 周りの人が取っている前例がないため、毎月なので休みづらい
  • 生理で休んでいいのは重症の人だけに限定される認識があった
  • 生理で寝込むほどしんどいときが夜勤明けや休みの日だったので、休む必要がなかった
  • 体調不良として他の理由を使うことが多い
  • あまり必要と感じたことがなかった。業務の途中で気分が悪くなったりしたら早退させてもらうなどしていた
  • 実際生理痛を理由にすると言いづらい

生理痛がつらい日が休日のタイミングだったから休暇をとるほどではなかったり、周りが生理休暇を使っていないと取得しづらいと感じたり、生理が軽い方だから必要性を感じないという意見がありました。

生理休暇の名称を変えたら休暇を取得しやすくなる

これは筆者が日頃から思っていることなのですが『生理休暇』という名前であることが、取得しづらい原因の一つではないのではないかと思います。

昨今『生理』についての話題が増えてきたりメディアでも取り上げられる機会が増えてきましたが、『生理』と人前で言うことや話題にすることが苦手という人もいます
そして、生理休暇を取得したいということを伝える相手が、生理がない人(主に男性)であった場合は言いづらいという懸念があります。これは年齢問わず、学生から社会人の共通の悩みでもあります。

弊社の社員は女性がほとんどで日頃から生理の話をよくしているため、『生理』という言葉への抵抗感が比較的少ない環境ですが、取得率が低い現状があります。 『生理』という言葉を言いづらいと感じる人がいるという状況も知っておくことが必要かもしれませんね。

部下に生理で休む人がいるときに検討したいこと

生理痛が辛いなどの症状は、婦人科系の疾患が隠れている可能性も考えられます。生理で休むことは私たちも望んでいるのではなく、体の不調のため仕方がなく休んでいるのです。

生理で仕事を休む必要がなくなったら、会社としても本人としてもいいことですよね。そのために、会社としてできることの案をいくつか提案してみます。

1.生理休暇の名称を変更する

見出し「生理休暇の名称を変えたら休暇を取得しやすくなる」でも書いたように、生理という名前であることで休暇を取得しにくいため、社内の名称を変更するのはいかがでしょうか。

これは生理に限らず、体調不良やメンタルの不調で休む場合にも使えるような名称にすれば、生理がある人だけに限定されず使いやすくなると思います。休むことは人間として当たり前の権利です。特に体の不調を感じたときは、休める環境があると働きやすい環境となりそうですよね。

2.婦人科への通院を促す

先述したように、生理痛が重いという場合、婦人科系疾患が隠れている可能性があります。そのため、婦人科へ行っていなさそうであれば通院を促すのも一つの方法です。
ですが、通院をしたからといって必ずしも生理痛がおさまるということはありません。通院をする=絶対に休まないとも限りませんが、社員の健康を考えることは大切なことです。

ただ、その際の伝え方もとても慎重に行う必要があります。あくまでもその人の体調を気にしているという理由で、「病院に行ったりしてる?」「毎月辛そうだから病院に行っていなかったら一度診てもらったら?」などと提案をベースに伝えてみてはいかがでしょうか。

生理が重い裏には病気の可能性もある

「生理で休むことは甘え」だと考える人たちの態度や言い方により、“生理を我慢しよう”と追い込んでしまう可能性があります。 生理痛が辛いというのは、婦人科系疾患とも関係している可能性があるということを一緒に覚えておいていただきたいです。

生理が辛いけど我慢して働いた結果、数ヶ月後に何かしらの病気が見つかり手術するので休む、退職するという方が、会社にとっても大変になるでしょう。そうなる前に、社員が休みやすい環境をつくったり考えていただけると、“この会社は社員のことをちゃんと考えてくれる”などと社員からの信頼度もあがると思います。

生理で休むことは「甘え」ではない

筆者は昔、母親に「みんな痛いんだから」「痛いのが普通だよ」などと言われたことがあり、当時は“生理痛は我慢することが当たり前”と思っていました。

「みんなも同じだよ」「みんなも辛いんだよ」と言われてしまうと、それ以上何にも言えなくなります。そういう言葉を言われ続けることで自分の中でも「生理で休むなんて...」という考えになっていて、知らず知らずに我慢をしてしまっていたかもしれません。

『生理休暇』と検索すると「生理休暇はおかしい」「生理休暇ずるい」「ずる休み」という意見を見かけました。なぜこのような意見があるのでしょうか。

生理のない人に理解してもらう必要がある

先述しましたが、「生理でお休みさせてください」と言うことへのハードルの高さは、生理が辛いという状況を理解してもらえないことが原因の一つです。

生理を経験したことがない人からすると、体の構造が違うので想像ができず理解もしにくいのです。また、周りにそのような人がいない、もしくは知らないということもあるでしょう。
また、生理を経験したことのある人の中でも、生理が軽い人は自分の基準で他人の辛さを想像するのが難しいのかもしれません。自分が体験していないことは想像することも難しく、よく分からないですよね。

ですが、私たちは「生理について完璧に理解してほしい!」と主張しているわけではありません。体の構造や痛みの度合いを理解ができなくても、「生理痛で動けない人もいるんだ」「生理が重い人もいるんだ」と理解しようとすることはできるのではないかと思います。

まとめ

生理は自然な現象であり、正直どうしようもできないことです。体調が悪いにも関わらず仕事や学校に行くことよりも、自分の体調を万全にすることが何よりも大切です。 体や心が元気だからこそ、仕事・学校でいいパフォーマンスができます。よりよいパフォーマンスをするためには、体調が回復するのを待つのは当然のことですよね。

生理で休む人に対して「そんなことで?」と思ったことのある人は、“そんなこと”ではないということをこの記事を通して知っていただきたいです。 生理の重さや生理に伴う体の不調などは個人差が大きいため、“同じ生理がある人”でも全員が同じとは限りません

生理が重いということは、月経困難症という病気の可能性があったり、婦人科系の疾患になっている可能性もあります。社員が長く働きやすいように、今の環境と向き合い、休みやすい環境にする、社員の意見も聞いてみるということはとても大事なことだと思います。

【参考】

生理休暇は女性保護?~ジェンダーバイアスを越えた誰もが働きやすい環境づくりとは~ - 産業保健新聞|ドクタートラスト運営
01【案】リリース(R2年度雇用均等基本調査)
月経痛(生理痛)の症状・原因|くすりと健康の情報局

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