フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
フィデスレディースクリニック
松本智恵子先生
滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、
大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。
健康や美容に良いとされ、人気が高い温泉旅行。
当日に生理が重なると、せっかくの楽しみが台無しになってしまうことがあります。
生理中の温泉は経血モレなどの不安もあり、温泉の入浴を避けることが多いと思いますが「せっかく来たなら入浴したい」と思うでしょう。
旅行当日に重なってしまったケースでは難しいところも出てきますが、時間的に余裕がある場合、ピルを使って生理をずらすことができます。
今回の記事では、生理中に温泉に入ることのリスク、旅行日程と生理のタイミングが重なるのを避ける方法、万が一生理がきた場合の対処法について解説します。
生理中の入浴自体は悪いことではありませんが、温泉に入るときには以下のようなリスクが考えられます。
温泉施設側は利用者の健康や危険性に配慮しているため、温泉自体を危険とみなす必要はありませんが、自宅の浴槽に比べると雑菌が多い可能性があります。
生理中は経血が外に出るために、子宮口がやや開いている時期です。そのため、細菌が膣から子宮内に入ってしまうリスクが高くなります。
想定外のリスクを軽減するためにも、生理中はタンポンや月経カップなどを使用した上で入浴することが勧められます。
生理では、毎回出血しますよね。出血をすると、出血した分の血液を補うために体内の鉄が使われていきます。使われた分の鉄分を食事で補わなければなりませんが、食事での摂取量が足りずに「鉄欠乏性貧血」と呼ばれる貧血状態の方が多いです。
鉄欠乏性貧血の場合、めまいやふらつきなどの症状が出やすいです。生理中は、体調が不安定になることも多いので、注意が必要です。
特に、生理の経血量が多い「過多月経」の場合には、血液を失う量が多く、体調にも影響しやすいので注意が必要です。
具体的には、めまいやふらつきなどの症状が出やすい可能性があります。生理の量が多い3日目くらいまでは、入浴を避けるのも一つですね。
生理前から生理中にかけては自律神経の乱れから、起立性低血圧を起こす方も多くなります。通常時であっても、入浴時には血管の拡張によって血圧が低下し、脳の酸素不足が起こり、入浴中や入浴後にクラクラしたり、倒れそうになったりという可能性があります。
また、温泉旅行となると、長風呂をすることも考えられます。脳貧血症状を起こすリスクはさらに高くなるため、注意が必要です。
脱衣所や浴槽内、浴槽から上がるときに経血がモレてしまうなどのリスクがあるため、温泉施設側が生理中の入浴を断るケースもあります。
施設側とまわりの利用者への配慮という点でも、禁止されている場合は入浴しないようにしましょう。
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温泉旅行までに時間的な余裕がある場合には、ピルの服用によって生理の予定日を調整できます。
ピルを服用することによって、旅行や大事な用事と生理のタイミングが重なるのを避けられるよう、生理予定日を早めたり、遅らせたりすることができます。
婦人科を受診し、医師の判断のもとで処方されます。
ピルの服用期間やスケジュール、種類は、生理を早めるか遅らせるかで異なります。
生理を予定日より早めたい場合には、低用量ピルか中用量ピルを使います。分かりやすいように、生理周期が28日の方を例としてお話します。
※以上の図は低用量ピルの場合
低用量ピルは、生理が始まった3~5日目から2週間程度の服用が必要です。
例えば2月25日が生理予定日で、その日にちょうど温泉旅行を控えていると考えてみましょう。
その場合、1月27日から2月11日までピルを服用し、2月12日ごろに服用をやめると、2月15日ごろに生理がきます。
中用量ピルは、生理周期の3~5日目から10日程度の服用が必要です。
同じように2月25日が生理予定日の場合を例とすると、1月27日から2月5日までピルを飲み続けると、2日後の2月6日ごろに生理がきます。
時間的な余裕があるなら低用量ピル、なければ中用量ピルと、スケジュールに合わせ使い分けましょう。
生理を予定日より遅らせたい場合には、中用量ピルを使います。
この場合には、生理予定日の5〜7日前から遅らせたい日まで飲み続けると、2~3日後に生理がきます。
1月25日が生理予定日で温泉旅行とかぶるために、生理を遅らせるには、1月20日ごろから温泉旅行の最終日までピルを飲みます。
そうすると、旅行が終わってから2〜3日後に生理がくる流れになります。
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スポーツの試合や試験など、大切な予定がある日にさけたいものと言えば、生理。生理がくると体調の変化や出血の不快感が気になり、当日の集中力や結果が大きく変わってしまうなんていうこともありますよね。
月経移動のために女性ホルモンの薬を服用することに、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ピルは医師の指示の下で正しく使用すれば、基本的に安全性が高いお薬です。ただし、ピルによって副作用が出ることもあります。
特に、吐き気や倦怠感などの副作用が多いとされていますが、副作用は数日程度で軽快します。
ただし、ピルを服用してすぐに吐いてしまうと薬が十分に吸収されない可能性があるため、吐き気が気になる場合は吐き気止めも合わせて使いましょう。
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生理中の温泉への入浴はさまざまなリスクがあるため、心配な場合は避けることをおすすめしますが、予定の調整がかなわず、生理が重なってしまった場合には次のような工夫で入浴は可能です。
旅館の部屋に個室用の浴槽があれば、個室で入浴を済ませましょう。
大浴場へ入浴する場合はタンポンや月経カップを使用すれば、浴槽や洗い場で血が流れるのを防げます。ただし、タンポンや月経カップを使用しても、使い方によっては経血がモレてしまうこともありえます。使用する場合は、あらかじめ練習しておくようにしましょう。
タンポンを使用する場合は、入浴の前に新しいものに替えたり、取り出すためのひもが見えないようにすると、他の利用者の方も気にならないかと思います。ただし、タンポンはトキシックショック症候群になる可能性があり、連続使用ができません。なので、入浴前まではナプキンを使用し、入浴する際にタンポンにするなど工夫しましょう。
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「生理中でも、温泉旅行を楽しみたい」というのが本音かもしれません。
時間的な余裕をもって計画を立てるようにして、タイミング的に可能であればピルで生理をずらすことも考えてみてはどうでしょうか?旅行を存分に楽しむには、万全な準備が大切なポイントです。
体も心も満足できる旅行にできるよう、できる限りの対策でのぞみたいものですね。
【参考】
ピルを使った月経(生理)の移動について - 銀座まいにちクリニック 内科・皮膚科・泌尿器科この記事を書いた人
2016年より、フリーランスライターとして本格始動後、医療機関(病院・クリニック)や治療院業界(接骨院・整骨院、整体院など)、歯科医院・クリニックへのライティングと取材のお仕事に携わっております。ライティングに関しては、ウェブ上の記事やホームページ掲載記事、書籍代筆・リライトを担当してきました。
自分自身が医療・健康の記事制作を担当するなかで、健康面で多くのメリットを得られたということもあり、「医療や健康に携わる専門家の方々の代わりとなり、読者の方々が心身ともに健やかに過ごせるようなサポートにつなげたい」という思いから、病院での治療や整体、ヘルスケアなど、幅広いジャンルでのライティングに努めています。