六本木ヒルズクリニック
一倉絵莉子先生
日本産科婦人科学会専門医、一般社団法人日本女性医学学会会員。 日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。 現在は六本木ヒルズクリニックにて診療を行っている。
六本木ヒルズクリニック
一倉絵莉子先生
日本産科婦人科学会専門医、一般社団法人日本女性医学学会会員。 日本大学医学部卒業。川口市立医療センター、北里大学メディカルセンター産婦人科等に勤務。 現在は六本木ヒルズクリニックにて診療を行っている。
生理前に熱を測ると37度台の微熱が……! そんな経験はありませんか?
コロナ禍になってから検温の習慣がつき、微熱に気づいたという方もいるかもしれません。
結論からいうと、生理前の微熱は正常と思っていいでしょう。女性の場合、ホルモンバランスの変動によって生理前には体温が高くなるのが普通で、37度程度の微熱が出ることもあるのです。
しかし、生理周期と関係なく微熱が続く場合には、コロナウイルス感染やほかの病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。また、なかには妊娠が心配という方もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、生理前に微熱が出るときの原因を紹介するとともに、妊娠の初期症状やコロナウイルス感染との見分け方をご紹介します。
心配な気持ちを解消できるよう、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
生理前に微熱が出る場合、ほとんどは女性ホルモンの変動によるものと考えられます。しかし、なかには別の原因によって微熱が生じているケースもあります。
ここでは、生理前に微熱があるときに考えられる原因を5つご紹介します。
生理前に微熱があるときに一番に考えられる原因は、女性ホルモンの変動による体温の変化です。
毎月同じように体温上昇がみられ、生理開始とともに体温が正常に戻るなら、女性ホルモンの変動による微熱と考えて問題ないでしょう。
生理前に体温が上がるメカニズムについては次章で詳しく解説します。
生理が始まる直前から生理中にかけて微熱が出る場合は、月経困難症の可能性が考えられます。
月経困難症とは、簡単にいうと生理が重い状態のこと。強い下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気、下痢、食欲不振など、生理に伴う病的な症状がある場合に、月経困難症と診断されます。
微熱も月経困難症の症状のひとつで、生理に関連してあらわれます。
ホルモン変動による微熱の場合は排卵後(生理開始の2週間ほど前)からあらわれるのに対し、月経困難症の場合は生理開始前後にあらわれるのが特徴です。
妊娠している場合も、生理前に体温が高くなることがあります。
妊娠すると、妊娠を維持するために体温を上げるホルモンの働きが高まります。そのため、個人差はありますが、生理前にいつもよりも基礎体温が上がり、微熱が出ることがあるのです。
生理の2週間ほど前から体温が上がり、生理予定日を超えて3週間以上微熱が続く場合は、妊娠の可能性が高いといえるでしょう。
更年期世代の女性の場合、更年期の女性ホルモンの変動が微熱の原因となっている可能性があります。
更年期には急に汗が出る、顔がほてる、熱っぽいなどの症状がみられますが、これらはホルモンバランスが乱れることによる自律神経の乱れが原因とされています。
ストレスや疲れも、微熱症状を引き起こす場合があります。
ストレスや疲れによって起こる微熱は、心因性発熱や機能性高体温症と呼ばれます。生理周期と関係なく長期間微熱が続く場合、ストレスや疲れが原因でないかを疑ってみましょう。
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次に、生理前に体温が上がるメカニズムをご紹介します。
まず、女性の体温はひと月の生理周期の中で二層に分かれます。
ひとつめは「低温期」で、生理開始から排卵までの期間です。もうひとつは「高温期」で、排卵から生理開始までの期間を指します。
低温期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンが多く分泌され、体温は平熱の状態で安定します。
対して、排卵後にはプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンが多く分泌されるようになり、高温期に切り替わります。
プロゲステロンは妊娠を維持しやすい状態をつくるホルモンのため、プロゲステロンのはたらきによって基礎体温が上昇するのです。
一般的に、高温期の体温は低温期よりも0.3〜0.5度ほど高くなります。高温期の基礎体温は36.7度以上の場合がほとんどですが、人によっては37度を超えて微熱となることがあるのです。
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次に、妊娠を心配されている、あるいは期待している方へ向け、生理前に微熱があるときと妊娠との見分け方をご紹介します。
生理予定日を1週間以上超えても生理がこずに微熱が続く場合は妊娠の可能性が高いですが、それ以前に妊娠の可能性を知りたい方もいるかもしれません。
そこで、ここでは妊娠超初期症状といわれる変化をご紹介します。
妊娠超初期(生理予定日よりも前)には、次のような症状があらわれる場合があります。
ただし、生理予定日前の妊娠超初期は、妊娠によって変化するホルモン量も微量であり、ほとんど自覚症状があらわれない時期です。上記の症状も必ずあらわれるものではなく、通常の生理前の症状と見分けがつかないことがほとんどです。
そのため、あくまで参考程度に捉え、妊娠の可能性が考えられる場合は生理予定日を1週間以上過ぎてから、妊娠検査薬を用いて判断しましょう。
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生理前に微熱があると「もしかしてコロナウイルスでは?」と心配になりますよね。実際に、コロナウイルス感染で症状が微熱のみだったという方もいるようです。
コロナウイルス感染と生理前に生じる微熱を見分ける方法は、以下の2つです。
(1) 生理予定日まで待ち、生理がきて体温が下がるかどうかを確認する
(2) PCR検査・抗原検査を受ける
症状が微熱のみの場合、検査なしで見分けるのは難しいといえます。心配な場合は医療機関できちんと検査をしてもらうのが安心でしょう。
コロナウイルス感染が疑われる場合は、お住まいの自治体ごとに発熱相談センターなどの相談場所が設けられていますので、まずは電話で相談してみてください。
地域ごとの相談先については、以下の厚生労働省サイトをご参照ください。
コロナウイルス感染に気づくためには、いつもの生理前と違うかどうかや、ほかに倦怠感や風邪症状が見られないかなど、細かく自分の感覚をチェックしてみることも大切です。
日本人の平均体温は36.89度といわれ、高い人でも37度程度です。そこへホルモンの変動が影響したとしても、37.5度を超えることはほぼありません。
なお、体温が37.5度を超えるようであれば、ホルモン変動以外の原因を疑ったほうがいいでしょう。コロナウイルス感染の可能性も疑い、念のため検査をしてみることをおすすめします。
ここまでご紹介してきたように、生理前の微熱は多くの場合ホルモン変動によるものです。しかし、なかには妊娠やその他の病気などが原因となっているケースもあります。
以下のような症状がみられる場合は、一度、医療機関への受診を検討してみてくださいね。
主に生理中に微熱が続く⇒月経困難症かも?
排卵後からいつもよりも体温が高く、感覚も違う⇒ 妊娠かも?
急に汗が出たり顔がほてったりする⇒ 更年期かも?
最近疲れやすく、生理周期に関係なく微熱が続いている⇒ ストレスが原因かも?
いつもは微熱にならないのに今月だけ微熱が出た⇒ ウイルス感染かも?
なお、受診の際は症状によって受診すべき医療機関が異なります。
月経困難症、妊娠、更年期の相談は婦人科へ、ストレスやウイルス感染が疑われる場合は内科へご相談ください。
生理前に微熱が出ることは、生理がある人であれなば正常といえます。ただし、発熱が37.5度を超える場合やいつもと違うと感じる場合には、他の原因も疑いましょう。
微熱を心配せずにすむためにも、普段から自分の平熱や生理に伴う体温変化を把握しておくことは大切です。これを機に、自分の体調変化に意識を向けていくようにしてみてくださいね。
この記事を書いた人
三児の母・ライター。もともと教育関係の仕事に従事していたが、第三子出産を機にフリーライターとして活動開始。中学・高校の教員免許(保健体育)、幼稚園教諭免許、保育士など教育関係の資格を持つ他、メンタル心理カウンセラー資格を保持。教育や健康分野の記事執筆、絵本脚本の執筆など幅広く執筆活動を行う。
著書:「ある日突然、障害児の母となったあなたへ」