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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説!

公開日 2025-04-09 更新日 2025-04-09

生理周期がバラバラ、ニキビや体毛の増加が気になる、なかなか自然に妊娠しない…。実はその原因、「多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)症候群」(=PCOS:polycystic ovarian syndrome)が関係しているかも?診断には婦人科での受診、検査が必要ですが、この記事では基礎的な内容を解説していきます。

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?

PCOSは、卵胞(卵子のもと)がうまく成長できずに排卵が起きにくくなる疾患です。 通常、毎月ひとつの卵胞が成熟して排卵され、残りの卵胞は自然に消失していきます。 しかし、PCOSの場合、この成長過程が途中で止まってしまい、小さな卵胞が卵巣の中に多数とどまったままに。これが「多嚢胞性(たのうほうせい)」という名前の由来です。 排卵がうまくいかないことで、月経不順不妊につながってしまうことがあります。

どんな症状があるの?


✅生理がこない、周期が長い(35日以上)
✅妊活を開始しているけどなかなか自然妊娠に至らない
✅にきびや体毛が増える(男性ホルモンの影響)
✅太りやすい
✅血糖やコレステロール値が高くなりがち

肥満の有無に関係なく、PCOSの人は高インスリン血症や脂質代謝異常を起こしやすく、糖尿病や脂肪肝、心臓・血管の病気のリスクも高いとされています。 さらに、排卵がないまま長期間過ごすと、子宮体がんのリスクが上がることも

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原因は?なぜPCOSになるの?


PCOSの原因はまだ完全には解明されていませんが、「視床下部-下垂体-卵巣」のホルモン調整がうまくいかないことに加えて、副腎や糖代謝の異常などが複雑に関わっていると考えられています。

脳の下垂体からは、卵胞を育てるためのホルモン(LH=黄体形成ホルモンとFSH=卵胞刺激ホルモン)が分泌されますが、PCOSの方ではLHが過剰になりやすく、FSHとのバランスが崩れてしまうのが特徴です。 その結果、卵胞がうまく成熟できず、排卵が起きにくくなるのです。

また、欧米ではPCOSは「メタボリック症候群のハイリスク群」とも見なされており、耐糖能異常(血糖の処理がうまくできない)、脂質異常、高血圧、心疾患などの生活習慣病を合併しやすいことが知られています。 排卵が起きないまま月経が長期間こない状態が続くと、子宮内膜がエストロゲンの影響で過剰に厚くなり、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクにもつながります。

「妊娠はまだ考えていないから大丈夫」と思っていても、将来の健康のために、生理を整える治療を受けておくことがとても大切です。

PCOSの診断ってどう決まるの?


2024年に改定された最新の診断基準では、以下の3つすべてに当てはまる場合に「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」と診断されます。

①月経の異常

  • 生理がまったくこない(無月経)
  • 生理周期が長い(稀発月経)
  • 排卵がないまま生理だけがくる(無排卵周期)など、生理の乱れがある状態

②卵巣の状態またはAMH値の高さ

  • 超音波検査で卵巣にたくさんの小さな卵胞が確認される(多嚢胞性卵巣)
  • または
  • 血液検査でAMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値が高い

③男性ホルモンの影響

  • 血液検査でアンドロゲン(男性ホルモン)が高い
  • または
  • にきび・体毛の増加など、男性ホルモンによる症状がある
  • または
  • LH(黄体形成ホルモン)が高い(※体質や肥満度により、LHとFSHの比で判断されることも)

診断にはちょっとした注意点も

LHは時間帯や体調によって変動しやすいため、1回の血液検査で異常値が出ないこともあります。必要に応じて再検査や他の検査と組み合わせて判断されます。

また、思春期はホルモンバランスが不安定な時期のため、初経から8年以内または18歳未満の場合にはPCOS診断は慎重に行うとされています。

どうして診断が大事なの?

PCOSは、将来的に妊娠希望がなくても「子宮体がん」「生活習慣病(糖尿病・脂質異常・高血圧など)」リスクが高まる可能性があります。 そのため、「生理がずっとこないけど、まあいいか…」と放っておくのではなく、生理を整える治療をして将来の健康を守ることが大切です。

女性

PCOSの治療法は“妊娠したいかどうか”で変わる


PCOSの治療は、「今すぐ妊娠を希望しているかどうか」によって大きく方針が異なります。どちらのケースでも、まずはライフスタイルの見直しが基本です。PCOSと診断されたからといって、すぐに強い薬を使うとは限りません。まずは、自分の体と向き合うことが大切な第一歩です。

妊娠を希望しない場合

「すぐに妊娠したいわけではない」という方でも、生理が長期間こない状態は放置してはいけません。排卵が起きないと、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されず、エストロゲンだけが子宮内膜に長く作用してしまいます。これが続くと、子宮体がんのリスクが高まる可能性があるのです。そのため、定期的に生理を起こす治療が必要になります。

✅低用量ピル(エストロゲン+プロゲステロン配合):ホルモンバランスを整えて生理周期を安定させる
✅黄体ホルモン剤(プロゲスチン):周期的に子宮内膜をはがして、生理を起こす
✅メトホルミン:耐糖能異常や肥満がある方には、糖代謝を整えることに効果が期待されます
✅漢方薬:体質に合わせて、冷えやホルモンのゆらぎを整える手助けを

肥満がある場合には、体重を少し減らすだけでも排卵が自然に戻ることがあり、将来的な疾患リスクも減らすことができるため、食事や運動など生活習慣の見直しも一緒に行われます。

妊娠を希望する場合

「妊活を始めたい」「早く妊娠したい」という方には、排卵を促すための治療が行われます。

✅排卵誘発剤(クロミフェンなど):まずは飲み薬で排卵を促します
✅注射によるホルモン治療(hMG-hCG療法):卵胞を育て、排卵のタイミングをコントロールします
✅腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD):内服薬や注射で排卵しにくい場合に行う、排卵を起こしやすくする手術です

なお、これらの治療には「卵巣が腫れてお腹が張る」「多胎妊娠の可能性が高まる」といった副作用リスクもあるため、専門医と相談しながら慎重に進めていくことが大切です。

気になる症状があれば受診を検討しよう


PCOSは、誰にでも起こりうる女性ホルモンのトラブルの一つでもあります。「生理が不規則」「AMHが高かった」「妊活がうまくいかない」——そんなときは、一度婦人科で相談してみましょう。

婦人科にいくことにハードルを高く感じてしまっている方がいれば、まずは少しでも自分の身体を知るきっかけとして、お家でできるAMH検査をしてみるのもひとつかもしれません。 早期発見と適切なケアで、体のリズムを取り戻し、未来の選択肢を広げましょう。

【参照】

多囊胞性卵巣症候群の診断基準(日本産婦人科学会)
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