オータム先生
筋トレを愛する現役整形外科医。
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日頃デリケートゾーンケアをしていますか?
顔や髪のケアはこまめにしているけど、デリケートゾーンはあまり意識したことがない、という方もいるかもしれません。
しかしながら、デリケートゾーンはその言葉の通り、非常に繊細な部位。顔や髪と同じか、ときにはそれ以上に注意を払って丁寧にケアする必要があります。
今回は、デリケートゾーンケアが大切な理由と実際のケア方法について、文献1)をもとに解説します。
デリケートゾーンは女性の外陰部(膣の外の女性器)を指す言葉です。「デリケート」という言葉どおり、ていねいに扱う必要があり、特別なケアが必要です。
ではいったいなぜ、特別なケアが必要なのでしょうか?具体的な理由についてお伝えします。
デリケートゾーンや膣内には、たくさんの常在菌が存在しています。その中でも特に乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)が膣内を弱酸性に保つことで、カンジダ菌などの細菌の侵入を防ぎ、有害な細菌の増殖を防いでいます。
この弱酸性というのは実はとても大切です。なぜなら、多くの細菌は酸に弱いという特徴を持つからです。乳酸桿菌というのは酸に強い特殊な細菌で、乳酸を産生することにより、他の細菌が生活しづらい環境を作ってくれます。つまり乳酸桿菌は、悪い細菌を退治してくれる体によい細菌ということですね。
デリケートゾーンのケアをしっかりおこなわないと、この環境が崩れる可能性があります。膣内がアルカリ性に傾き、バリア機能を果たせなくなることで、有害な細菌の感染につながるというわけです。
デリケートゾーンは皮膚が薄く、膣内も粘膜なのでとても繊細です。腕や足などと比べると、皮膚から物質を吸収する割合も高いといわれています。そのうえ、デリケートゾーンには、尿や膣分泌物、便、下着の摩擦など、皮膚に刺激を与える様々な要素が存在します。
ただでさえ繊細な部位なのに、多くのストレスがかかっているということですね。それにより、かゆみや痛み、不快感などの症状が表れることがあります。したがって、デリケートゾーンは、特に慎重に優しくケアすることが必要です。
デリケートゾーンは膣の分泌物、常在菌、女性ホルモンなどにより絶妙なバランスを保っています。
よって、生理周期や体調に変化が起きると、特にトラブルが起きやすい場所です。また、性感染症を引き起こした際にも、おりものやニオイの変化によりサインが表れます。
このような体のサインをいち早く察知するためにも、デリケートゾーンケアが重要です。日頃から、デリケートゾーンを清潔に保ち、状態を把握しておくことで、体の不調や性感染症の発見を早めることができるかもしれません。
デリケートゾーンの健康状態を守るための、具体的なケア方法を解説していきます。
外陰部は分泌物が多く、ひだの間に汚れが溜まりやすいため、毎日ていねいに洗うことが大切です。このときに注意したいのは優しく洗うことと、膣の中までは洗わないことです。
ゴシゴシ強くあらってしまうと、皮膚が荒れてトラブルの原因になります。また、膣の中を洗う膣内洗浄は、逆に感染のリスクを増加させる恐れがあります。したがって、ひだの周りを中心に、汗や膣分泌物、尿などを洗い流すことで、デリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。
デリケートゾーンを弱酸性の環境に保つためには洗剤にも注意する必要があります。
刺激の強い洗剤でゴシゴシ洗ってしまうと、膣内がアルカリ性に傾いてしまうからです。通常の洗剤の多くは中性やアルカリ性です。アルカリ性の洗剤は汚れを落とすには効果的なのですが、デリケートゾーンにとっては刺激が強すぎてしまいます。
したがって、弱酸性、低刺激性、低アレルギー性の性質をもった洗剤を選ぶことが大切です。通常の洗剤を使うと、常在菌を失ったり皮膚のトラブルを起こしたりしてしまいます。デリケートゾーンの繊細な組織や弱酸性の環境を守るために、洗剤にもこだわりましょう。
デリケートゾーンは下着に密着し、直接外の空気に触れることが少ないので、通気性が悪くなりがちです。特に生理の時に、ナプキンによってかゆくなるという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
通気性が悪いと汗や尿による皮膚への刺激が強くなってしまいます。また、環境の変化により正常な細菌のバランスが崩れてしまいます。そのため、タイトな下着やタイツを避け、絹や綿の下着を身につけたり、ゆったりとしたズボンやスカートを履くことが大切です。
他には、下着をつけずに寝たり、Iラインを脱毛したり、ナプキンではなくタンポンを使用することも有効です。
■デリケートゾーンを弱酸性に保つことで体を感染症から守ってくれる
■デリケートゾーンの洗い方は刺激の弱い洗剤で外陰部の汚れを優しく落とすのがよい
■ストレスがかかりやすいので、通気性をよくして、締め付けは避ける
デリケートゾーンは、感染症から体を守るバリアとして働いています。正常な細菌バランスや弱酸性の環境は、バリア機能を果たすために非常に重要です。
ケアの方法としては刺激の弱い洗剤で外陰部の汚れを優しく落とすことが大切でした。丁寧な洗浄やこまめなケアにより、私たちの健康を守ってくれるデリケートゾーンを労ってあげましょう。
参考文献
1)Ying Chen,et al.Role of female intimate hygiene in vulvovaginal health: Global hygiene practices and product usage.Womens Health (Lond). 2017 Dec; 13(3): 58–67.この記事を書いた人
ライター・ナレーター・ヘルスケアカウンセラー。
もともと大学病院に勤務をしていたが、
看護師10年目を機にフリークリエイターとして活動を開始。
看護雑誌や医療メディア、クリニックHPのコラムなど、
医療や健康分野を中心にインタビューや執筆活動を行う。
食への関心が高く、現在は食関連のベンチャー企業でも
インタビュー記事を担当中。