島袋朋乃先生
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
島袋朋乃先生
産婦人科医師。平成28年に旭川医科大学医学部を卒業後、函館五稜郭病院、釧路赤十字病院を経て、現在は産婦人科医として市中病院で臨床経験を重ねる。総合病院やクリニックで産科、婦人科、生殖医療に携わる。日本医師会認定産業医。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会所属。
「生理前に起こる眠気やだるさをどうにかしたい」
そんなお悩みをお持ちの女性は多いと思います。
生理前には眠気やだるさがあらわれることがありますが、時として日常生活に支障をきたすこともあり、つらいですよね。
生理前の眠気やだるさには、低用量ピルや漢方薬などがおすすめです。そのほか、ホルモンの変動に左右されにくい生活習慣も大切といえます。
この記事では、生理前に眠気やだるさが起こるメカニズムや、低用量ピルなどの対処法・セルフケア方法について詳しくご紹介します。生理の眠気やだるさに影響を受けずに、毎日を快適に過ごせるよう、ぜひ参考にしてくださいね。
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まずは生理前に眠気やだるさが起こるメカニズムをご紹介します。
正確なメカニズムは解明されていませんが、生理前の眠気やだるさには、生理に伴うホルモン変動が関わっていると考えられています。
通常、女性の体では、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の量が周期的に変化することで、生理周期がコントロールされています。
この女性ホルモン量の変化が、体や心にさまざまな影響を与えているのではないか、といわれているのです。
生理前にはプロゲステロンの分泌量が増加します。プロゲステロンには眠気を促す作用があるため、眠い、だるいといった症状があらわれるのです。これは、妊娠をした場合に備えて体を休ませようとするしくみだといわれています。
また、排卵後の体温上昇やホルモン変動による自律神経の乱れも、眠気やだるさに関わっていると考えられています。
生理前は体温上昇に加え、自律神経が乱れることでも寝つきが悪くなり、眠りが浅くなります。そのため、これらの原因で睡眠の質が下がることも、日中の眠気やだるさに影響しているとされているのです。
排卵は生理開始から約2週間後に起こりますが、そのあとは、体が妊娠に備えて体温が0.3~0.6度ほど高くなります。そのため、生理開始の2週間ほど前から眠気やだるさを感じる方もいるかもしれません。
そのほか、ビタミンやカルシウムの不足や生理前の血糖値の変化も、生理前の不調に関わっているのではないかという説もあります。
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生理前の眠気やだるさは、PMS症状のひとつとされています。
PMSとは、生理前になるとあらわれる心や体のつらい症状を指します。また生理前3~10日の間続き、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます(※)。
PMSの症状としては、主に以下があげられます。
PMSの身体症状 | PMSの精神症状 |
---|---|
・倦怠感 ・めまい ・むくみ ・のぼせ ・腹痛 ・頭痛 ・腰痛 ・おなかの張り ・乳房の張り ・食欲不振 ・過食 |
・情緒不安定 ・イライラ ・抑うつ ・不安 ・集中力の低下 ・眠気 ・睡眠障害 |
公益社団法人 日本産科婦人科学会を参考に筆者作成
眠気は精神症状に分類され、だるさ(倦怠感)は主に自律神経の乱れによって生じる症状とされています。
※参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会
次に、生理前の眠気やだるさへの対処法をご紹介します。
まずは比較的効果の高い方法として、低用量ピルと漢方薬についてご紹介していきます。
低用量ピルとは、2種類の女性ホルモンを含む錠剤を経口摂取することでホルモン変動をコントロールする薬です。排卵を抑制する効果があるため、避妊薬としても用いられます。ホルモンの変動を抑えられるため、PMSにも効果が期待できます。
眠気やだるさなどのPMS症状は、主に排卵後のプロゲステロン増加によって生じるとされていますが、低用量ピルは排卵自体をとめるため、プロゲステロンの大幅な変動が起こらなくなるのです。それにより、ホルモン変動に伴うPMS症状も軽快します。
ただし、低用量ピルにはいくつか種類があり、含まれるホルモンの種類や量が種類によって異なります。PMSの治療に適したもの、避妊に適したもの、ニキビ治療に適したものなど、用途によって適したピルが異なるため、まずは医療機関に相談しましょう。
PMSは治療の対象となる病気のため、もしもPMSと診断されればピル処方も保険適用となります。また、体質や年齢、既往歴など何らかの理由でピルを処方できない場合があります。医師と十分に相談した上で治療の内容を決めることが大切です。
医療機関の治療では漢方薬が処方されることもあります。
漢方薬とは、植物や鉱物など自然由来の成分(生薬)から作られた薬です。根本の体質改善にはたらきかけることで、心身のバランスを整え不調を改善します。
「なんとなくだるい」など、対応する西洋薬がないような不調にも効果を発揮するとされ、多くの医療機関で治療に用いられています。
生理前の眠気やだるさには、加味逍遥散(かみしょうようさん)などの漢方薬がよく用いられます。市販薬でも探すことはできますが、漢方薬はその人の体質や症状(漢方では「証」という)に合わせて処方することで効果を発揮するため、医療機関や漢方薬局に相談したほうがいいでしょう。
ホルモン薬に抵抗がある場合には、通常の婦人科でも処方してもらえます。
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眠気やだるさなどのPMS症状は、生活の乱れやストレスによって悪化する場合があります。睡眠不足や食習慣の乱れ、ストレスは、ホルモンバランスや自律神経のバランスをおかしくしてしまうのです。
逆に言えば、ストレスを減らし基本的な生活習慣を整えれば、PMS症状が改善する可能性があります。
そこで、生理前の眠気やだるさのセルフケアとして、ホルモン変動に左右されない体をつくる3つの方法をご紹介します。
食事・運動・睡眠といった基本的な生活習慣を整えることは、健康な体づくりのためにかかせません。ホルモンバランスの乱れを整えるため、まずは体のバランスをしっかり整えておきましょう。
以下に、食事・運動・睡眠のそれぞれのポイントをご紹介します。
食事のポイントは、なるべくいろいろな種類の食材をとることです。食材の種類を増やすことで、栄養素のバランスが整いやすくなり、ホルモンや体のバランスも整います。
ビタミンやカルシウムの不足も眠気やだるさに影響するため、野菜や果物、海藻、ナッツ類なども食事に取り入れてみてください。
適度に体を動かすことでホルモンや体のバランスが整うほか、睡眠の質が上がり日中の眠気防止に役立ちます。
デスクワークでは定期的に立つようにしたり、エレベーターよりも階段を使うようにしたりなど、ちょっとした心がけで運動量を増やせますね。ハードな運動でなくても、十分効果が期待できますよ。
寝不足は日中の眠気に直接的に関わるほか、ホルモンバランスを乱す大きな原因になります。忙しい方も、まずは夜にしっかり休むことを意識しましょう。
ストレスを感じたときには、無理をせずに休むことが大切です。
人が眠るためには、副交感神経が優位な状態でなければなりません。しかし、ストレスがあると自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位な状態のままになってしまいます。そのため、睡眠の質が下がり、日中の眠気が悪化する原因になるのです。
ストレスを何日も持ち越さないよう、ストレスを感じたときにはその都度、解消することを意識しましょう。
具体的には、ゆっくりお風呂に入ったり、軽い運動をしたりするのがおすすめです。イヤなことからはなるべく意識を逸らし、趣味など自分の好きなことに集中するのもいいでしょう。
生理前の眠気やだるさを緩和するには、睡眠の質を高めることが有効です。睡眠の質が上がればすっきりと目覚められ、日中に眠気がでにくくなります。
睡眠の質を高める方法としては、朝日を浴びる、適度な運動をする、眠る前に心身をリラックスさせるなどの方法が有効です。
朝日を浴びることで夜にメラトニンという眠りに関わるホルモンが分泌され、睡眠の質が高まります。加えて、ヨガやウォーキングなどの軽い運動ができるとよりいいでしょう。
眠る前には副交感神経を優位にできるよう、部屋を暗くし落ち着いた雰囲気で過ごしましょう。ハーブティーやアロマなど、好きな香りを嗅ぐのもおすすめです。
テレビやスマートフォンのライトは神経を興奮させてしまうため、眠る前はなるべく見ないようにしてくださいね。
最後に、眠気やだるさなどのPMS症状を悪化させるNG行動をご紹介します。
以下のような行動は、睡眠の質の低下やホルモンバランスの乱れを招き、PMS症状を悪化させてしまうため注意しましょう。
<生理前の眠気やだるさを悪化させるNG行動>
眠気などの不調がでやすい生理前は、なるべく体を温め、血行をよくし、リラックスして過ごすようにしてくださいね。
PMS症状のひとつである生理前の眠気やだるさの対処法としては、低用量ピルや漢方薬での治療のほか、セルフケアでも改善する可能性があります。症状がつらい場合は、我慢せず、医療機関で相談してみてくださいね。
眠気やだるさは生活習慣の乱れなどによっても悪化してしまうため、基本的な生活習慣を整えるなど、体と心のメンテナンスも大切です。日々の生活も見直し、ホルモン変動に左右されない健康な体をつくっていきましょう。
参考
生理前に眠気が強くなるのはなぜ?医師おすすめの対策6選|楽しむ・学ぶ|養命酒製造株式会社この記事を書いた人
三児の母・ライター。もともと教育関係の仕事に従事していたが、第三子出産を機にフリーライターとして活動開始。中学・高校の教員免許(保健体育)、幼稚園教諭免許、保育士など教育関係の資格を持つ他、メンタル心理カウンセラー資格を保持。教育や健康分野の記事執筆、絵本脚本の執筆など幅広く執筆活動を行う。
著書:「ある日突然、障害児の母となったあなたへ」