確実に避妊できる方法はある?女性男性それぞれの避妊方法と成功確率

公開日 2021-10-15 更新日 2021-10-15

記事監修医

フィデスレディースクリニック

松本智恵子先生

滋賀医科大学卒業。京都大学医学部婦人科学産科学教室に入局後、 大津赤十字病院、洛和会音羽病院などを経て、フィデスレディースクリニックで勤務。
産婦人科専門医、日本女性医学会会員。

男女のお付き合いで気になってくるのが避妊方法です。今では男性が避妊するコンドームだけではなく、女性も主体的に避妊できるピルやリングもあります。それぞれの避妊方法のメリットやデメリット、避妊できる確率についてもご紹介します。

正しい避妊方法の知識を得て、女性も自分の体を守りましょう。

その避妊方法は成功確率が低いかも?

現在、日本で主流の避妊方法は、男性用避妊のコンドームや安全日の予測でしょう。

「避妊していたのに妊娠した」という話をよく聞くと思いますが、それは誤った情報や避妊に関する知識が十分でないために正しい避妊ができていないことが原因です。
以下に挙げる方法は成功確率が低い避妊方法です。

膣外射精

膣外射精は正確にいえば避妊方法にはなりません。どれほど微量の精液でも精子が存在しており、勃起後に性器を密着させただけでも子宮の中へと侵入する可能性は十分にあります。

排卵日予測(基礎体温チェック、オギノ式)

女性であれば生理日の予測のために基礎体温を測ったり、生理周期から危険日を予測したりした経験はあると思います。こうした排卵日の予測は不妊治療にも使用されていますが、避妊方法としては推奨されていません。

体調や生活リズムで生理周期の乱れが起こることもあり、避妊の成功確率としては76~95%であると知っておきましょう。

女性ができる避妊方法と成功確率

妊娠を防ぐには、男性に任せるのではなく女性も積極的に避妊することです。

成功率を上げる避妊方法のポイントとしては「手間がかからないこと」「費用がかからないこと」「副作用など体への負担が少ないこと」「男性の協力がなくても避妊できること」です。

低用量ピル:経口避妊薬の服用

低用量ピルによる避妊は、毎日決まった時間にピルを飲むことで体内のホルモンの量を調整し、排卵をコントロールする避妊方法です。ピルは産婦人科で処方してもらえます。
近ごろはオンライン診療をとりいれているクリニックも増えており、インターネット購入も気軽にできるようになっています。

■避妊確率

正しく服用すれば99%以上と高い避妊効果が得られますが、飲み忘れがあると排卵のリスクが高まるため、避妊できる確率は91%まで下がります。

■メリット

  • 男性が避妊に協力的でなくても女性が主体的に避妊できる
  • 月経異常や生理痛などが改善する
  • 服用を中止すれば妊娠可能

■デメリット

  • 1日でも服用を忘れると避妊率が落ちる
  • 薬による副作用(飲み始めは吐き気や頭痛など、また血栓症、異常出血など)のリスク

避妊具(IUD、IUS)の挿入

IUD/IUSイメージベクター

子宮内や膣内に避妊器を挿入する方法で、一度の装着で数年にわたって高い避妊効果があります。挿入と抜くのは医師の診察が必要です。

IUD(子宮内避妊具):子宮内の環境を変えることで、精子の運動を阻害し、受精を妨ぎます。やわらかいプラスチック製のT字器具で、種類によって3・5・10年間と長い妊娠効果が得られるのが特徴です。プロゲステロン(黄体ホルモン)や銅を放出するタイプを選べば、より高い避妊効果が得られます。

IUS(子宮内避妊システム):IUDの中で、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出するタイプのものをIUSと呼びます。日本では「ミレーナ」というIUSが使用可能です。
一般的に「避妊リング」と呼ばれ、子宮内に装着してプロゲステロンを持続的に放出させて精子が子宮内へ侵入するのを防ぎ、さらに受精卵の着床も妨げます。
IUDよりも高い避妊効果があり、月経異常の改善も期待できます。

■避妊確率

銅タイプのIUDで99.2%、IUSは99.8%の避妊成功率があり、ほぼ100%といえます。

■メリット

  • 装着後すぐ~長期間避妊できる
  • 手間やコストがかからない
  • 体への負担が少ない(全身への影響がない)
  • 外せば妊娠可能

■デメリット

  • 医師による挿入・抜去が必要(数分)
  • IUDは経血量が増えることがある(プロゲステロンのないタイプ)

避妊ペッサリー、避妊用スポンジ

性交渉の前に、毎回自分で膣内に避妊具を装着させる方法です。装着には多少コツが必要ですが、難しい作業ではありません。オンライン薬局などで購入できます。

ペッサリー:子宮の入り口にシリコンやゴムのキャップをかぶせて、精子の侵入を防ぐ避妊方法です。性交渉前に装着して、性交渉後は6時間以上おいて外すようにします。ペッサリーがズレたときや続けて性交渉を繰り返すときに、殺精子剤を入れて避妊効果を高めることができます。

避妊用スポンジ:殺精子剤が含まれた直径4cmほどの丸いウレタンスポンジを濡らして、膣の奥へ挿入することで子宮内に精子を侵入させないようにします。

■避妊確率

ペッサリーを正しく使用できた場合の避妊成功率は94%で、性交渉中のズレや外すタイミングなどを間違うと88%となります。殺精子剤も一緒に使うと避妊に成功する確率も高くなります。スポンジだと76~88%と成功率が低い傾向です。

■メリット

  • 入手が簡単
  • 体への負担が少ない(全身への影響がない)

■デメリット

  • 単体よりもコンドームや殺精子剤との併用が望まれる
  • 続けて性交渉する場合には不向き
  • 慣れるまで装着が難しい
  • ズレる可能性がある

殺精子剤(避妊ゼリー、フィルムなど)

性交渉の前に膣の中に精子を殺す成分を挿入しておく方法です。効果が発揮される時間が限られているため、タイミングを外すと残念ながら効果が得られません。殺精子剤は通販サイトなどで購入できますが、潤滑ゼリーの代わりに殺精子剤がついているコンドームもあります。

■避妊確率

性交渉の10~15分前には挿入し、1時間以内に射精がされれば82%、それ以外の射精のタイミングでは72%です。種類による避妊確率の差はありません。

■メリット

  • 手軽に購入できる
  • 体への影響は少ない

■デメリット

  • タイミングを誤ると失敗する確率が高い
  • コンドームやペッサリーとの併用が望まれる
  • 性交渉のたびに挿入が必要

避妊手術:卵管結紮(らんかんけっさつ)

卵管をリングやクリップではさんだり切断したりして、受精させない避妊方法です。妊娠出産が健康を損なうと認められれば保険適用となります。

■避妊確率

99%以上

■メリット

  • 手間がない
  • 妊娠を望まない人に適している

■デメリット

  • ごくまれに子宮外妊娠を起こす
  • 再び妊娠したいときに、もとに戻す手術をするのが困難

男性ができる避妊方法と成功確率

コンドーム

コンドームイメージ画像

挿入前に男性器にかぶせて使用するシリコンやゴムのカバーです。正しく装着できれば性感染症も防げます。

「性交渉のたびに新しいコンドームを使用する」「射精後はすぐに処理する」など細かい配慮が必要ですが、スーパーや薬局など手軽に購入できるためハードルが低く手軽な避妊方法です。

■避妊確率

86~97%と成功率が高い方法ですが、コンドームが破れていたり、性交渉の途中(射精直前)で装着するような誤った使い方をしたりすると妊娠の可能性が高まります。

■メリット

  • 手に入れやすい
  • 性病の予防になる

■デメリット

  • サイズや品質によって外れやすかったり破れやすくなる
  • 慣れるまで装着が難しい

避妊手術:パイプカット

男性の精管を糸で縛ったり切断することで、精液に精子が含まれなくなるため妊娠を防げます。射精の感覚は手術前と変わりなく、既婚男性に選ばれている方法です。手術後に妊娠を望む場合は、体外受精を行います。

■避妊確率

ほぼ100%避妊できる

■メリット

  • 妊娠の確率はほぼない
  • 性交渉のときに避妊する手間がない

■デメリット

  • 将来的に自然妊娠は難しい

避妊に失敗したときの対処方法

時間イメージ画像

うまく避妊できなかったとき、72時間(3日)以内に服用して妊娠を回避するのがアフターピル(緊急避妊薬)です。

プロゲステロンの作用で排卵を起こさないようにしたり、受精卵の着床を阻害します。避妊成功率は85-99%以上の確率で避妊できることがわかっています。

ただし、避妊に失敗してから飲むのが早ければ早いほど効果が高いので、できるだけ早く服用する必要があります。副作用はありますが、軽微なものが多いです。アフターピルは産婦人科で診察を受けて処方してもらうか、オンライン薬局で個人輸入できます。

■避妊確率

アフターピルは24時間以内の服用で95%の避妊率を発揮しますが、時間の経過とともに成功率が下がり、3日目の服用では58%まで下がります。

■メリット

  • 性交渉後にも避妊ができる

■デメリット

  • 副作用が出やすいることがある
  • 何度も使用すると低用量ピルより高額

おわりに

どの避妊方法も決して100%避妊できるというものではありませんが、より確実な避妊をしたいのであれば、男女それぞれの避妊方法を組み合わせて成功確率を高めましょう。

望まない妊娠で傷つくことを思えば、女性も男性とともに積極的に避妊していくことが大切です。お互いにどんな避妊方法を望んでいるのか、もしものときについても話し合っておきたいですね。

【参考】

22 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版

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