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不適切な使用で重篤な病気に?生理用品を正しく衛生的に使うためのポイント

公開日 2022-05-19 更新日 2022-05-19

記事監修医

オータム先生

筋トレを愛する現役整形外科医。
病院HPの記事作成、様々な企業と連携して新規メディアの立ち上げ、連載記事執筆、 コンサルティングなど幅広く活動中。
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ナプキンやタンポンなどの定番商品から、最近では月経カップまで、私たちの生活にはさまざまな生理用品が溢れています。
生理は毎月のことなので、生理用品にかかる費用はなかなかのもの。「もったいないし、まだ交換しなくてもいいかな」と、同じナプキンを長い時間使った経験、誰でも1度くらいはあるのではないでしょうか。

しかし、生理用品を長い時間使用すると、血液の付着やムレによって陰部が不衛生になりやすいです。生理用品の不適切な使用によるリスクの1つに、TSSという重篤な感染症が挙げられます。

そこで今回は、正しく衛生的に生理用品を使うためのポイントをお伝えしたいと思います。

生理用品を不衛生に使用することで感染症の原因になりえる

デリケートゾーンの感染症で重大な病気の1つに、黄色ブドウ球菌という細菌による感染症があります。黄色ブドウ球菌は、人の皮膚などにもともと生息している細菌で、決して珍しいものではありません。
しかし、デリケートゾーンについてしまった細菌が過剰に増殖し、毒素を作るようになると、トキシックショック症候群(TSS)という感染症を起こしてしまう可能性があります1)

なんだか聞き慣れない病気かもしれませんが、黄色ブドウ球菌が発生させる毒素によって体が異常を察知し、さまざまな症状を引き起こしてしまう病気です。
ショックは日本語で「衝撃」を表す言葉ですが、本来体の外にいるはずの細菌が体の中で毒素を出すことによって、体がびっくりして過剰な反応をしてしまうということですね。

一旦この病気になってしまうと急に具合が悪くなり、ときには命に関わります。感染する確率は低いですが、危険な感染症です。急な高熱、吐き気、下痢、だるさが特徴的な症状で、皮膚に赤い発疹ができることもあります。
多くの場合は生理中に発症するので、体調がおかしいと感じたら、なるべく早く婦人科や救急外来などを受診しましょう。

TSSの発症は、生理用品と関連があると指摘されています。TSS自体は男女関係なく発症するものですが、多くが生理中の女性で起こっているためです。
他にも生理用品の不適切な使用は腟カンジダや細菌性腟炎など、他の病気のリスクにもつながります。したがってこれらの病気を予防するためにも、正しく生理用品を使用することが大切です。

ナプキンは汚れていなくても交換しよう

では、具体的に生理用品をどのように使えばよいのでしょうか。

1つは、たとえ汚れていなくてもナプキンを6時間を目安に定期的に交換することです。朝、昼、夕方、お風呂上がり、と時間を決めておくのもよいでしょう。

生理の終わりかけは、あまり出血もなくナプキンが汚れないので「そのままでいいか」と思ってしまうかもしれません。ですが、ナプキン使用中はデリケートゾーンの湿度が20%も高くなり、ムレやすいことがわかっています2)。

人肌の温度で湿度が高いというのは、菌が繁殖するには絶好の環境です。黄色ブドウ球菌も、ナプキン内の環境では通常よりも増殖してしまう可能性があります。見た目があまり汚れていなくても、定期的に交換してくださいね。

タンポンはピンポイントで使おう

報告によりばらつきはあるものの、タンポンを使う人は、使わない人に比べてTSSを起こす確率が32倍になります3)。また、タンポンは、吸収性の高いもののほうが感染症のリスクが高いです。

タンポンを購入するとき「一番吸収性の高いもの」を選んでいないでしょうか?吸収性が高いタンポンが優れた商品とは限りません。吸収性は、個人の出血量に合わせたものを選ぶことが大切です。

たとえば、使用後のタンポンを抜いたとき、白い部分が残っていたら、もう1段階吸収性の低いもので大丈夫でしょう。逆にもしモレているようなら、1段階吸収性の高いものを選んでみてください。衛生的に使うためにも、説明書に書かれている通り、4〜8時間でタンポンを抜くのがよいです4)

ごく稀にではありますが、タンポンのひもが切れて吸収体が膣内に残ってしまうことがあります。膣内にタンポンを放置すると感染症の原因になるので気をつけなければなりません。タンポンのひもが切れた場合は、すぐに婦人科を受診し、除去してもらいましょう。

月経カップは定期的な消毒が大切

月経カップでは、TSSの報告は比較的少なく、感染症のリスクはナプキンやタンポンに比べると低いようです。
また、腟カンジダや細菌性腟炎を起こす頻度も低く、衛生的に使用できることがわかっています5)。

ただし、サイズの合わないものを使ったり爪が長いと、膣内が傷つき菌が入りこんでしまう可能性もあります。
月経カップは繰り返し使うものですから、しっかり煮沸消毒をしないと衛生的に使用できません。洗浄についても、各メーカーで推奨されている洗浄方法があるので、取扱説明書などを確認しましょう。月経カップ専用の洗浄剤なども売られているので、チェックしてみるのもいいですね。

私たちの皮膚には、TSSの原因である黄色ブドウ球菌が付着していることがあります。月経カップを扱う前には爪を短く切り、しっかり手を洗って清潔にしてから使用してくださいね。

今回学んだ新常識

■生理用品は正しく使わないと不衛生になってしまう
■ナプキンは汚れていなくても交換する
■タンポンは出血量に合わせた吸収性を選ぶ
■月経カップは定期的な消毒が大切

生理用品の使い方を見直して安全に使おう

今回は、ナプキン・タンポン・月経カップ、3種類の生理用品について、衛生的に使用するためのポイントを紹介しました。
ナプキンやタンポンは、汚れていないからといって長時間使用してはいけません。月経カップは衛生面で優れているようですが、定期的な消毒がポイントとなりそうです。
また、性器に触れる際や生理用品を使う前は、しっかりと手洗いをし、手を清潔な状態にしておくことが大切です。

TSSを始め多くの病気に悩まされることがないように、生理用品の使い方に気をつけてみてください。

参考文献

1) 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会. トキシックショック症候群 医療従事者向けガイド
2)佐藤真理子 他. 月経期における生理用ナプキン内微気候と快適性. 日本家政学会誌 Vol.57 No.7 477-485 (2006).
3)Patrick M. Schlievert et al. Device-Associated Menstrual Toxic Shock Syndrome. Clin Microbiol Rev. 2020 Jul; 33(3): e00032-19.
4)一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 | 生理用タンポン・自主基準
5)Anna Maria van Ejik et al. Menstrual cup use, leakage, acceptability, safety, and availability: a systematic review and meta-analysis. Lancet Public Health. 2019 Aug;4(8):e376-e393.

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