生理周期で外見への自信が変わる?ホルモンとボディーイメージの科学

公開日 2022-02-03 更新日 2022-02-03

記事監修医

オータム先生

筋トレを愛する現役整形外科医。
病院HPの記事作成、様々な企業と連携して新規メディアの立ち上げ、連載記事執筆、 コンサルティングなど幅広く活動中。
Twitterはこちら

「今日はなんだか肌の調子が悪いな」
「顔もむくんでるし見た目もボロボロ、生理前だからかな」

鏡で自分の顔を見てがっかりする。多くの方が一度はしたことのある経験でしょう。
特に生理前になってくると、顔がむくんだり、肌も荒れて、自分の外見に自信がなくなるという人も多いのではないでしょうか?

実はこのような外見への自信のなさは、生理周期に影響されているのではないかという話があります。女性ホルモンのバランスによって、自分のボディーイメージが変わり、落ち込んだ気分へつながるということです。

そうはいっても外見への自信とホルモンが、実際にどう関係しているのか気になりますよね。そこで、今回は生理周期によってどのようにボディーイメージの変化が起きるのか調べた論文を紹介したいと思います。

生理周期による外見への自信や気分の変動を調べた論文

ドイツにあるテュービンゲン大学で、35人の女性を対象にとある実験が行われました1)。この実験では生理周期によって、ボディーイメージがどのように変わるのか調べています。

35人の女性に対して行われた実験

今回の実験では35人のうち、16人は生理周期が正常で自然な排卵をしている人で、他の19人はピルや避妊リングなどを使用している人でした。ピルや避妊リングは、ホルモンをコントロールして排卵を抑制するはたらきがあるため、今回の研究では2つのグループに分けたということですね。

それぞれの女性に、外見への自信と感情の安定感などをアンケートしました。アンケートは排卵期と生理前にわけて行われています。また、それと同時に3分間鏡の前に立ってもらい、視線がどのような動きをするのかという点も調べました。

それぞれのグループで異なる実験結果

まずは、自然な生理周期のグループ結果を見てみましょう。

排卵期の女性では自分の体への自信が増し、鏡の前で体をチェックする時間が減りました。逆に生理前では外見への自信が減り、鏡の前でもコンプレックスを感じている部位を見る回数が多かったそうです。生理周期によって、外見への自信は大きく変わるということですね。

一方で、ピルや避妊リングで生理周期をコントロールしていたグループでは、周期中の時期によらず鏡を見る時間は一定で、自信のある体の部位も自信のない体の部位もバランス良く確認していたという結果が出ています。ピルや避妊リングには女性ホルモンを一定に保つ働きがあるため、今回のような結果になったのかもしれません。

生理周期によって気分やボディーイメージが変わる原因

生理周期によって気分やボディーイメージが変化する仕組みについて解説します。

生理周期とは?女性ホルモンの働きについて

まずは生理周期について簡単におさらいしましょう。生理周期は大きく卵胞期・排卵期・黄体期に分かれています 2)

このうち、卵胞期から排卵期にかけては女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が増えます。これにより、脳の気分を高める化学物質が増加し、俗に「キラキラ期」などと呼ばれます。生理が終わってから心身ともに軽くなり気分が良くなると、実感される方も多いのではないでしょうか?

生理が始まる黄体期の後半からは、エストロゲンの分泌は低下して、排卵期とは逆の現象がみられます。具体的にはイライラ、不安感、むくみ、胸の張り、頭痛などが挙げられ、このような一連の症状をPMS(月経前症候群)と呼びます。

このように、ホルモンの変化によって女性の心と体は左右されやすいので、生理前になると自信を失うというのも無理はないのかもしれません。

今回紹介した研究の背景

そもそも今回紹介した実験は、拒食症という病気に対する研究として行われました。拒食症とは歪んだボディーイメージが原因で、痩せているのにも関わらず「ご飯を食べたら太る」という思い込みや恐怖から、普通の食事を取れなくなってしまう病気です。ときに死にも至る恐ろしい病気でもあります。

拒食症は圧倒的に10〜20代の若い女性に多く、その要因の1つとして生理周期に伴うホルモン変化が関係しているのではないかと、このような実験が行われました。男女で病気の発症度合いが違うのも、女性ホルモンのバランスによるものであれば納得ですね。

生理周期を理解して自分をコントロールすることが必要

ホルモンの状態によって女性の気持ちは大きく変わります。自分が生理周期における、どの期間かということを理解しておけば、客観的に自分の心と体に向き合えそうですね。

いつもより外見に自信がもてなくても「そういえばそろそろ生理がくるし、女性ホルモンが低下しているからしょうがないか」と楽観的に思えるかもしれません。逆に、生理が終わった後の排卵期に大事なデートやおでかけの予定を入れると、楽しみが増えるかもしれませんね。

今回紹介した論文の研究者も「病気(拒食症)の予防のために、体への不満の根底にあるメカニズムを理解することは重要である」としています。自分の生理周期と気持ちの変化をぜひ一度把握してみましょう。

今回学んだ新常識

■外見への自信や気分の変化は、生理周期の影響を受けているかも
■生理周期とボディーイメージの変化を理解することで、客観的に心構えができる

まとめ

今回は生理周期によって自分の体に対する自信が変わるという研究について解説しました。生理の時の外見の変化には、直接的な体への変化だけでなく、ホルモンバランスによるボディーイメージの変化も大きく関わっているということがわかりました。

生理前になると外見に自信がなくなることもあるかもしれませんが、自分の生理周期を把握しておくことで客観的に心構えしておけるのではないでしょうか。

参考文献

1) Kerstin Krohmer,et al.Hormones Matter? Association of the Menstrual Cycle With Selective Attention for Liked and Disliked Body Parts."
2) MSDマニュアル家庭版 月経前症候群(PMS)

病院検索

からだの悩みやピルについて、
病院に相談してみましょう

STEP1
STEP2

取り扱いで絞り込む

病院の特徴から絞り込む

病院の特徴から探す

エリアから病院を探す